カーペンターズよ永遠に

ムカシムカシの音楽のハナシ。

皆さん、好きなアーティストは誰ですか?時代が変わっても、新しい素晴らしいアーティストが次々に世にデビューして行きますね。

tom先生の大好きなアーティストは「カーペンターズ」という、70年代に世界中で大ヒットを飛ばした兄妹デュオです。tom先生が小学生のころ、「シング」という曲が日本でもヒットしました。NHKの「みんなのうた」でも、日本語に訳されたものが歌われるほどでした。その時、tom先生はカーペンターズの存在を知るのです。

兄のリチャードはメロディメーカー・ピアニスト・アレンジャー、時にはボーカルも務め、初期のアルバムには彼の歌声の入ったものが複数存在しています。妹のカレンは、天性のボーカルセンスを持った天才で、ドラマーでもありました。

tom先生がレコード(今のアナログ盤のこと)を生まれて初めて買ったのは、中学一年生の時で、カーペンターズの大ヒット曲「イエスタデイ・ワンス・モア」でした。習い始めた英語のつたない知識で、歌詞カードにある英語の歌詞を見ながら、暗記してしまうほど歌った思い出があります。

時は流れ、21世紀になり、カレンが病気で亡くなってからもう40年の月日が流れていますが、今でも彼女の歌声は聞こえてきます。これまでどれほどドラマの主題歌・挿入曲・CMに使われたことでしょう。

このごろのtom先生は、youtubeカーペンターズの曲を聴きながら、テストを作っていたりします。仕事中に不謹慎だって?確かに、ね。でもまあ、もう定年が近い窓際のおじさんですから、それぐらいカンベンしてやってくださいな。

というわけで、カーペンターズサウンドは、tom先生にとってはEVER GREEN MUSIC(いつまでも色あせない、永遠の名曲)であるという、まことにもってタワイもないオハナシでした。

落雷

ムカシムカシのお話よ。

これはtom先生が、川っぷちの学校に勤めていたころのことです。この学校は、県内を流れる一番大きな川の、堤防のすぐ外にあって、堤防の上は整備されたサイクリングコースになっていました。周囲はのどかに田園風景が広がっていました。しかしそんなのどかな場所にあると、たまに自然災害を心配しなければなりません。台風が来ると、この川の上を渡る鉄道に支障が出ます(すぐ止まります)し、川の水があふれれば河川敷にある第二グラウンド(野球部の専用グラウンド)が水没します。しかし何よりも怖いのが”落雷”です。周囲に高い建物がない田園地帯ですので、先生がお勤めの学校の鉄筋5階建てが、周辺で最も高い建物。カミナリが鳴ったら、生徒は直ちに校舎に逃げ込むしか方法がありません。また、下校時だったらしばらく校舎から出ないようにと放送が入るくらいです。

その日は、たまたま授業が半日で終わり、ほとんどの生徒が下校した午後3時ごろ、先生たちは5階建て校舎の2階にある会議室で、職員会議をしていました。30分くらい前から遠くでカミナリの音がゴロゴロと聞こえ、第二グラウンドの野球部員を校舎に戻してひと安心という感じで、会議は始まりました。ところがどんどんカミナリの音は大きくなり、その大きな音で会議がたびたび中断されておりました。そして「ピカッ!」と「ゴロゴロ」の間隔がどんどん縮まって来ていました。「近くに落ちないといいね」なんて小声で話しながら、会議が進行していたその時!!

「ドカーーーーン!!!」と、爆弾でも落ちたか?!というような轟音が響き、校舎が地震のように揺れました。「うわーっ!」「きゃーっ!」歓声とも、悲鳴ともつかないような声が、校内のいたるところから起きました。「近くに落ちたね!」「落ちたよ落ちた!」どこに落ちた?tom先生がすぐに最寄りの窓にかけより、雨降る中に顔を外に出してあたりをうかがうと、地面に何かが転がっているのが見えました。「あ、あれは!!」よくみると、コンクリートのかたまりのようなものが転がっています。大きなものでは人間の頭部を超えるようなものまで含め、大小の破片が転がっていました。そしてその視線をそのまま真上に挙げていくと・・・その校舎の5階の一番上、少し空間に出っ張るようになって出ているコンクリート部分の、その端っこが大きく欠けているではありませんか!そうです。カミナリは、その5階建て校舎に落ちたのです。そしてその衝撃で、鉄筋校舎の一部分が破壊されたのでした。

長く教員生活を送っているtom先生ですが、後にも先にも、こんな経験は他にありません。貴重な体験として、語り草としてはいいネタですが、冷静に考えたらこんな恐ろしいことはありませんね。以上、自然の驚異のお話でした。

北はどっちだ?

ムカシムカシのおはなしよ。

これはtom先生が修学旅行に引率した時の、別のおはなし。

担任の先生が夜の点呼をして回っているころ、副担任のtom先生は廊下を巡回します。すると、ある部屋のドアが開き、男子生徒が顔を出します。「こらこら、もう消灯時間だよ。ドアを開けちゃダメじゃないか」するとその男子生徒はマジメな顔で聞いてきます。「先生、キタはどっちですか?」「えっ?!なんで?そんなこといいじゃないか。早く寝なさい」「いやいや、気になって眠れないっすよ。教えてくださいよ」どうやら『きたまくら』で寝るのがイヤみたいで、方角を気にしているようす。「えーっとね、月がコッチの方角に出てるから・・こっちかな?」と少しイイカゲンな感じで答えたのですが、当の男子生徒は安心したらしく、「ありがとうございます!おやすみなさい!」バタン!とドアが閉まりました。

慣れない旅行先、マクラが変わって眠れないという子もいたようです。翌日の朝、食事の時にこの話は軽い笑いを誘い、先生方のココロに一陣のさわやかな風が吹いたようでした。

それにしてもtom先生、本当にその方角、北でしたか?

親分

ムカシムカシのおはなしよ。

「親分」というと、なにやらヤバめなフンイキですが、いえいえ、昔はどこの学校にもいた、親分肌の豪快な先生のこと。

今日のオハナシは、tom先生が「親分」と呼び尊敬する、昭和・平成の時代を生きた、某センセイのオハナシ。

あるとき、親分が市役所に行った時のこと。本人確認のできるものをと言われ、はたと困りました。今日に限って免許証もサイフもない。市役所へは奥さんに送ってきてもらい、用が済んだら買い物に出た奥さんと落ち合う予定で、車の中にバッグを置いてきてしまいました。「本人が本人だって言ってんだから、これが一番の証明だろう?」と親分ねばりますが、市役所の職員も困り顔。うーん、どうしようかと首をひねった親分にひらめきが!「そうだ、市長呼んで来いよ。アイツは俺の出た高校の2年後輩だから、アイツなら俺が本人だって証明できるぜ」市長を呼んで来い?!前代未聞の申し出に、市役所職員も困り果てた。たまたまその日、市長が出張のため留守だったので、それはムリと説明。親分、納得できないが、問題は片付かない。すると・・・視界の中を通り過ぎる見覚えのある姿。「オッ!アイツアイツ、アイツは俺の〇〇高校時代の教え子だ!アイツなら俺を証明できるぞ!おーい!」と大声で呼んだそうです。呼ばれたのは同じ市役所の別の部署で働いていた人で、確かに親分の教え子でした。呼ばれた本人もビックリですが、親分は〇〇高校でも名物先生で、誰一人知らない生徒がいない存在でしたから、呼ばれて急いで駆け付けたそうです。「俺が俺だってことを、オマエ証明してくれよ!」いやいや親分、そういう問題じゃないでしょ!突っ込みのひとつも入れたくなる場面ですねえ。

でこのあとどうなったか、詳細のやりとりについてはよく覚えてないんだそうですが、なんと申請した証明書は無事発行されたそうです。うーむ、親分おそるべし!市長だろうが何だろうが、後輩が先輩の言うことを聞くのはアタリマエという基本発想がもうぶっ飛んでますね。そしてその話を楽しそうにしてくれる親分。慕う生徒や教員がとても多いのは、言うまでもないでしょう。

先生の一日

これはムカシのオハナシではなく、最近の話。

tom先生はどんな一日を過ごしているのでしょうか?ある日の様子を追ってみましょう。

朝、7:50。勤務時間は朝会で始まります。先生がたの朝の打ち合わせですね。その時間は8:30。あれ?きょうはtom先生、いつもより学校に来るのが早いよ。いつもは8:20くらいに着いているから、30分くらい早い。なんでかな?そう、今日は問題児の親御さんが来て、校長先生よりお説教をいただく日。学年主任をしているtom先生は、担任とともにその場に立ち会わないといけません。これが8時に始まるので、10分前には職員室にたどり着いてないといけないのです。それでも無事に予定通り片付いてくれれば、それで一仕事終わりですな。

8:30。教頭先生の司会で職員全体の会が終わると、tom先生、今度は学年の打ち合わせの司会に早変わり。8:40には、担任が教室に向かうので、けっこう忙しいですよ。「今日も一日、よろしくお願いします!」でしめくくり。

8:50。今日は一時間目から授業があります。担任の先生が生徒の出席をチェックして戻ってくると、出席簿を預かり、教室へ向かいます。

9:40。一時間目が終わり、職員室へ戻ります。お茶でのどを潤したら、パソコンをひらき、メールのチェックをし、ワープロを起動させて、作りかけの授業プリントの続きを作り始めます。今日は次の授業が四時間目だから、11:50まではデスクワークに励みます。

10:30ころ。小腹がすいてきたtom先生、引き出しを開けると、そこからおせんべいを出します。そしてパソコンを閉じてちょっとブレイク・タイム。ひと息ついて、トイレに行って、肩を回して、またパソコンを開きます。

11:40。三時間目終了のチャイムが鳴りました。あれ?tom先生、舟をこいでるよ。大丈夫かな?夕べも寝るのが遅かったし、今朝は今朝でいつもより早起きし、早朝から緊張する仕事をしてきたからね、少しお疲れですね。なんとか眠気をふりしぼって

授業に出かけます。

12:40。昼休みは奥様の愛妻弁当を食べます。いつもニコニコ、おいしそうに。そして奥様にメール。「楽しみの時間がおわってしまってさみしい・・」とかなんとか、ね。

13:25。午後の授業が始まります。今日は学年集会の日です。生徒諸君の待つ体育館へ移動します。今日は進路に関わる大事な集会、tom先生も主任として一言、お話をします。ただ、持ち時間は5分ほど。ホントは自分の体験談や過去の経験など、話したいことは山ほどあるのですが、5分。きっちり話して、次の先生にマイクを渡します。

14:25。六時間目は、各教室にて進路の話の続きを、担任の先生から。tom先生は各教室を見て回ります。イマドキの若い先生は優秀だな、オレが若いころはもっとオロオロしてたなあ、なんて昔を思い出しながら。

16:00。放課後、部活動の時間になります。tom先生は文化部の、しかも週に2日しか活動していない部活動の顧問をしています。今日はoffの日。ところがそんな日に限って臨時の会議が入ります。今日は長引かないといいなあ・・

18:00。案の定、会議は長引いて、ようやく職員室を出る準備。まだ運動部などは部活動をやっている時間ですが、いつも5時には帰るtom先生からすれば、1時間とはいえ、時間オーバーはキツイところ。きょうは朝も早くから働いているしね。若くない体にはコタエます。お疲れさまでした。

と、帰ろうとすると、一本のデンワ。嫌な予感がします。電話に出た教頭先生から、tom先生呼ばれます。生徒が駅へ向かう途中で露出狂にあったと。そこで、自分以外の同じ学年にいる先生方に現場に向かってもらいます。こんな時、主任は学校で待機し、連絡を待つしかありません。これは7時をまわるかも・・

18:30。連絡が入ります。電話してきた生徒には結局会えなかったと。すると、さっき露出狂を見たという生徒からの電話が入ります。よく聞いてみると、自宅の最寄り駅の近くでの出来事であると。エッ?それじゃあ学校の最寄り駅の近くを探しても、生徒本人にも露出狂にも会えないわなあ。ヤレヤレ。詳しくは明日、当の本人が学校に来たところで確認しましょうということで、今日はオワリ。やっと帰れます。やっぱり7時だあ・・・

みなさんは「なんだ、tom先生、たいした仕事してないじゃん」と思いましたか?そうですねえ、している仕事量はさほどではないんですけどねえ、キモチ的にはけっこう責任あるオモいことをやっているんですよ。特に授業以外の仕事が重いです。でもね、これもお仕事、給料のウチです。

さあ、また明日も頑張ろう!

ハンドボール投げ

ムカシムカシのおはなしよ。

tom先生がまだ20代後半で、全日制の共学校に転勤して間もないころのお話。

この日は朝から好天で、予定通りに体育の体力テスト(スポーツテスト)が行われました。今日の日程は、1,2時間目が1年生、3,4時間目が2年生、5,6時間目が3年生の割り当てで、体育の先生以外の先生も協力して行います。tom先生は3年生の副担任、午後のグラウンドに出ていきます。

生徒の面倒を見る割り当ては男子の「ハンドボール投げ」。生徒諸君が次々にボールを投げて、記録をつけて交代していきます。そうして全クラスが終わったころ、暇を持て余している3年生がボールを投げたりけとばしたりして遊んでいました。tom先生、その3年生に声を掛けます。「よーし、先生も投げてみようかな♪」それを聞いた何人かが反応しました。「いいよ先生、投げてみなよ、オレたち拾ってやるから」ハンドボール投げは、安全にそして正確に行われるように、何人かの球拾いが必要になります。「お、なんだなんだ」とまた数人の男子が寄ってきて、10人くらいになりました。そして球拾いに散らばっていきます。「いいよーせんせー!」生徒諸君は、だいたい20メートルの表示のあたりに散らばっています。ふだん、教室で古典の文法の授業をしている若造に何ができると言わんばかりの感じです。確かにtom先生、体だってそんなに大きいほうではありません。ちなみにハンドボール投げは、男子で40メートルまでのラインが引かれます。そこまでボールが届けば満点ですから。

そこでtom先生言いました。「みんなー、もうちょっと下がってくれよ、危ないから」すると生徒諸君は、お互いの顔を見あわせて笑っています。「いいよーせんせー!」「見栄はんなよー!」「ダイジョブダイジョブー!」誰一人としてそこを動きません。「いや、危ないからー!」しぶしぶ動き出す生徒は、でも2、3人。しかも5メートルくらい下がって止まります。「もっともっと!たのむよー!」「いいから早く投げなよー!」こんなやりとりを2、3回した後、tom先生は「しょうがないなー」とつぶやき、周りに他の生徒がいないのを確認したあと、やおらボールをわしづかみします。そして、ブルンブルンと2、3回その腕を振り回した後、「いくよー!」と一声。そして振りかぶって投げたボールは・・・

「シューッ!」という音を残して、ボールは大きな弧を描き、生徒たちの頭上をはるかに超え、そして40メートルのライン上にポトリ。そこにいた男子生徒のほとんどが口を開けたまま、何が起こったのかわからないといった表情。そして次の瞬間、「オーッ!」「すげー!」「なんだなんだ?!」と様々な声が聞こえてきました。

「もう一球投げるよー!」そこにいたみなが急いで後方に移動します。「シューッ!」という音とともに、2球目は40メートルラインのわずか手前に着地しました。「すげー!」「tom先生、何者?」「しんじらんねー!」と口々に言う生徒に向かって、tom先生は「ありがとねー!」と一声言って、片付けを始めました。

駆け寄ってきた生徒がtom先生に話しかけます。「先生、何者?」「なんであんなに投げられんの?」「すげーすげー!」すると先生、ニコニコしながら「むかしね、ハンドボールをちょっとやってたんだよ」

tom先生、この学校ではバスケット部の顧問をしていましてが、高校時代はハンドボール部に所属していました。その時は、45メートルぐらい投げていたそうで、その中肉中背の体格からは想像もできないほどのスポーツマンだったそうで。翌日からの古典の授業、男子生徒のtom先生を見る目つきが変わったかどうか、定かではありませんが・・・

人は見かけによらぬもの、というお話。

卒業式その1

ムカシムカシのおはなしよ。

今日は定時制高校の卒業式。午前中は体育館で全日制の卒業式が行われ、紅白幕などをそのままにしておいてもらって、夕方6時から始めます。5時を過ぎたころ、いつも職員室に入りびたっている4年生が、今日もやって来ました。いつもなら仕事帰りの作業服、油まみれ汗だらけでやってくるのに、今日はみんなおめかししている。そりゃそうだ、卒業式には親も来るが彼女を呼んでいるヤツもいる。カッコイイとこ見せなくちゃね。

ところが着慣れないスーツにネクタイ、襟元が何かおかしいヨシ田君にtom先生声をかけた。「ヨシ田君、このシャツはピンホールでしょ?」「なにそれ?」見ると、本来ネクタイの結び目の下になるはずのピンが、ネクタイの上に出ていて、居場所のなくなった結び目が下のほうにだらしなくぶら下がっています。「いま直してあげるよ」と、まるでお母さんがするように、tom先生はヨシ田君のネクタイを結び直してあげます。「ありがとう、先生」ヨシ田君の男っぷりも上がりました。

ところがその様子を横で見ていたヨシ山君が「でもさあ先生、俺たちいつも作業服だし、ネクタイなんかしめることないから、別に出来なくてもいいんじゃない?」と言いました。するとtom先生はこう言いました。「これから君たちの友達や仲間が結婚するだろう?その時に作業服じゃ行かないでしょ?だからその時のために練習しておかなきゃ」あーナルホド。身近に思い当たる仲間の姿でもアタマにうかんだんでしょう。その場にいたみんながウンウンとうなづきました。「さあみんな、もうすぐ食堂があくよ。最後の給食を食べにいこうぜ」

こうしてみんなは職員室をあとにするのでした。