落雷

ムカシムカシのお話よ。

これはtom先生が、川っぷちの学校に勤めていたころのことです。この学校は、県内を流れる一番大きな川の、堤防のすぐ外にあって、堤防の上は整備されたサイクリングコースになっていました。周囲はのどかに田園風景が広がっていました。しかしそんなのどかな場所にあると、たまに自然災害を心配しなければなりません。台風が来ると、この川の上を渡る鉄道に支障が出ます(すぐ止まります)し、川の水があふれれば河川敷にある第二グラウンド(野球部の専用グラウンド)が水没します。しかし何よりも怖いのが”落雷”です。周囲に高い建物がない田園地帯ですので、先生がお勤めの学校の鉄筋5階建てが、周辺で最も高い建物。カミナリが鳴ったら、生徒は直ちに校舎に逃げ込むしか方法がありません。また、下校時だったらしばらく校舎から出ないようにと放送が入るくらいです。

その日は、たまたま授業が半日で終わり、ほとんどの生徒が下校した午後3時ごろ、先生たちは5階建て校舎の2階にある会議室で、職員会議をしていました。30分くらい前から遠くでカミナリの音がゴロゴロと聞こえ、第二グラウンドの野球部員を校舎に戻してひと安心という感じで、会議は始まりました。ところがどんどんカミナリの音は大きくなり、その大きな音で会議がたびたび中断されておりました。そして「ピカッ!」と「ゴロゴロ」の間隔がどんどん縮まって来ていました。「近くに落ちないといいね」なんて小声で話しながら、会議が進行していたその時!!

「ドカーーーーン!!!」と、爆弾でも落ちたか?!というような轟音が響き、校舎が地震のように揺れました。「うわーっ!」「きゃーっ!」歓声とも、悲鳴ともつかないような声が、校内のいたるところから起きました。「近くに落ちたね!」「落ちたよ落ちた!」どこに落ちた?tom先生がすぐに最寄りの窓にかけより、雨降る中に顔を外に出してあたりをうかがうと、地面に何かが転がっているのが見えました。「あ、あれは!!」よくみると、コンクリートのかたまりのようなものが転がっています。大きなものでは人間の頭部を超えるようなものまで含め、大小の破片が転がっていました。そしてその視線をそのまま真上に挙げていくと・・・その校舎の5階の一番上、少し空間に出っ張るようになって出ているコンクリート部分の、その端っこが大きく欠けているではありませんか!そうです。カミナリは、その5階建て校舎に落ちたのです。そしてその衝撃で、鉄筋校舎の一部分が破壊されたのでした。

長く教員生活を送っているtom先生ですが、後にも先にも、こんな経験は他にありません。貴重な体験として、語り草としてはいいネタですが、冷静に考えたらこんな恐ろしいことはありませんね。以上、自然の驚異のお話でした。