ヘルメットをかぶろうね

ムカシムカシのおはなしよ。

今日はtom先生の勤める定時制高校の交通安全教育。ここの学校では原付バイク・スクーターでの登校が許可されています。自分も自動二輪の免許を持ち中型バイクに乗るtom先生は、なんとか生徒の事故を減らしたい、ケガを減らしたいといつも思っていました。でもそんな先生のお話はけっこうかたくるしいものになってしまって、生徒のみんなはあまりよく聞いてくれません。そこで・・・

「今日は、ヘルメットの話をするよ」おやっ?いつもと違うな。生徒のみんなが食いついてきます。いいぞいいぞ。

「先生もホンダの250(ccにのバイク)に乗ってるけど、何度も転んでけっこうケガもした。で、今はフルフェイスの(ヘル)メットにしているよ」

バイクのヘルメットは、原付であっても義務付けされているので、みんな持っています。だけれど、生徒のみんなは「半キャップ型」と呼ばれる、野球帽のようなおわん型のヘルメットを、頭にかぶらずくびに引っ掛けて乗っている子ばかり。いつも危ないなと思っていたtom先生はこう言いました。「みんな、給料が入ったら、フルフェイスのヘルメットを買いなさい。高くてかっこいいヤツね。そしてあごひもをしっかり止めるんだよ。そうすればたとえコケても命は助かるからね」うんうん、今日の視聴率は100パーセントだ。

それから一か月がたったころ、教室にはカラフルなフルフェイスヘルメットが増え始めました。みんな楽しそう。やれ何万円しただ、やれ有名レーサーのレプリカモデルだと話が盛り上がっていました。tom先生もそれを見てニコニコ。

ところが数か月後、クラスのヨシオ君が事故で入院したと連絡が入りました。聞くと、足の骨折と、そしてあごを数針ぬう大けがであると。

さっそく病院に駆けつけてみると、本人はいたって元気。安心したtom先生はヨシオ君にたずねます。

「ヨシオ君、どうしてあごにけがしたの?かっこいいフルフェイスを教室で自慢してたじゃない」「転んだ時にヘルメットが吹っ飛んじゃって・・・」「えっ?!あごひもしめてなかったの?」「うん・・・」「ありゃー。先生言ったじゃない。あごひもしめなよって」「ゴメンよ、先生・・・」

でもヨシオ君、生きていてよかったよ。次からは気をつけようね。

一か月後、ヨシオ君は元気に学校に復帰しました。ヨカッタヨカッタ。

土足はダメよ

ムカシムカシのおはなしよ。

tom先生は定時制高校の勤務を始めました。この学校で慢性的に問題になっている(小さな)困りごとの一つに「土足」がありました。上履きをはかずに、土足のまま校舎に入ってきてしまう生徒が多いのです。注意すればだいたいの生徒は上履きにはきかえてくれるのだけれど、みな「メンドくせー!」。なんとか自主的にはきかえてくれる方法はないかな。tom先生は考えた。幸いここの学校は男子校。オレも男だ!これくらいならゆるされるだろう!と勝手に解釈。

夕方。生徒諸君が登校し始めます。いたいた、今日も土足のヨシオ君だ。「おーtomちゃん、おっはよー」「おはよー。ヨシオ君、ダメじゃないか土足で。上履きはきなよ」「メンドくせーよ、いーじゃん」「言うこと聞かないと、オシオキだよ!」tom先生はヨシオ君の背後に素早く回り込み、わきの下に手をつっこむと、やおら全力でくすぐり始めました。ビックリしたのはヨシオ君。不意を突かれてなすすべもなく、みもだえしながらその場にくずれ落ち、笑いが止まらない。

「わかったー!tomちゃんカンベンしてー!ゆーこときくよー!」ふっふっふ、ここで力を抜いたら君が逃げるのはわかっているのだ!「あーっ!わーっ!ぎゃーっ!」夕闇迫る校舎の昇降口にひびきわたる絶叫!ヨシオ君がまったく抵抗できなくなったころ、tom先生も疲れたんでやめました。昇降口付近でのこの光景をまのあたりに見たほかの生徒諸君、はじめは笑っていましたが、実はtom先生の目が笑ってないことに気が付くと、あわてて上履きにはきかえる子が続出します。やったね。みんな、先生の言うことを聞こうね(^_-)-☆